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高森明勅
2020.7.21 06:00政治

子供達が心配だ

先日の日本教師塾の懇親会で、小学校の先生から気掛かりな話を聴いた。
新型コロナウイルス対策として、政府が緊急事態宣言に先立って、
いち早く実施した“全国一斉休校”の悪影響について。
休校が解除された今も、不登校を続けている児童がいるという。
又、家庭内暴力で児童相談所に預けられた子供もいるそうだ。

無論、これらは各地で多数、発生している問題のごく一端に過ぎないだろう。
そうした事態に対処する為に、現場の先生方には大きな負担が
のし掛かっているに違いない。

7月15日時点のデータで、10代のPCR検査陽性者は全国で僅か655名、
10歳未満の陽性者409名で、死者は勿論どちらも0。
陽性者も無症状か、発熱も無い程度の軽症など(親が陽性者なので検査を
受けた、という程度)。
その親の世代の陽性者に占める死者の割合も、今のところ30代で約0.1%、
40代で約0.4%という状況。

これらの数字は、分母になる陽性者数が実際の(無症状の)感染者より、
かなり少なく出ている。
なので、実態はもっともっと低いはずだ。
そうした実情を踏まえると、ピンポイントの学級閉鎖でなく、
特定学校の休校でもなく、限定された地域の休校ですらなく、
(現時点でも、全国の地方自治体の多くで、陽性者がごく少数に
とどまっているにも拘らず)“全国一斉休校”という措置が、
緊急事態宣言も“出されていない”時点で決断されたことは、
果たして適時適切なことだったのか、どうか。

私は「鶏を割(さ)くに、いずくんぞ(又は、なんぞ)牛刀(ぎゅうとう)
を用いん(小さなニワトリを料理するのに、どうして大きな牛を切る為
の包丁が要るのか)」という、『論語』(陽貨篇)に出てくる孔子の言葉
を思い出してしまう。

それが政治指導者のパフォーマンスや、役人の保身や、
テレビ等の科学的根拠に基づかない無責任な“煽り”によって、
十分な思慮も無く行われたのであれば、到底許し難い。

今回の休校措置が、子供達の健康、生活、学力の面で、
実際にどのようなプラス・マイナスの影響を与えたのか、
文部科学省は厳重に調査すべきだ。

民間のジャーナリストも徹底的に取材して、実態を明らかにして欲しい。
しかし、本当にその弊害が明らかになるのは、恐らく今から10年後、
20年後だろう。

子供達一人ひとりの人生や、将来の日本の国力それ自体に、
どんな影を投げ掛けることになるか。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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